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不動産のおとり広告事情!摘発に向けた新技術がもたらす不動産業界の可能性

こんにちは不動産WEBジャーナルの村石です。

皆さんは「おとり広告」というのをご存知でしょうか。

おとり広告とは、広告に表示されている商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのような表示をしている不当な広告のことです。不動産業界でも既に入居者のいる物件をさも空室かのようにインターネット上に表示されるケースがあり、公正取引委員会が取り締まっています。

 

今回ご紹介するのは、「おとり広告」の摘発についての取り組みと、その技術が不動産業界以外からも注目されているケースを紹介します。

下記に WEDGE REPORT様 の記事を転記します。

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引っ越しシーズンも終わり、この春、入学や就職などに向けて部屋探しをした人も多いだろう。かつては、不動産情報誌などを参考に部屋探しを始めたものだが、いまでは不動産検索サイトや不動産会社のホームページなどインターネットで探し始めるのが一般的だ。紙幅に限りのある紙メディアに比べて、サイトには物件をいくら掲載しても問題がない。

例えば、ある不動産検索サイトで「東京都中央区」と「家賃10万円を上限」にして、調べてみると5000件以上の不動産情報がでてくる。実際の部屋探しでは、この中から、細かな条件を絞り込んで探すのだ。不動産検索サイトのおかげで不動産情報量は圧倒的に多くなった。

 

紛れ込む「おとり広告」

予算や好みにあった物件をスマホやパソコンで見つけ、不動産会社にメールや電話で問い合わせる。

と、ここで問題になるのが「おとり物件」だ。

部屋探しをしたことがあるならば、問い合わせた物件に「すでに入居が決まってしまいました」と不動産仲介会社のスタッフに言われたことは、一度はあるのではないだろうか。元々は業界用語だったおとり物件という言葉も、いまではすっかり有名になった。

このおとり物件広告を見つけるサービスで注目されているのが、不動産テックベンチャーであるターミナル(東京・港)だ。同社の「trueper(トゥルーパー)」は膨大な不動産データを使い、検索サイトに載った物件の最新情報を調べるものだ。もし入居が決まっていたり、入居中だったりする「おとり物件広告」であるとわかれば、サイト上に表示できなくなる。

元々、おとり広告は、入居が決まった物件の「落とし忘れ」が多いと言われている。ポータルサイトや自社ホームページに掲載した後に入居が決まったが、更新作業が間に合わずにさらに問い合わせがきてしまうことだ。

インターネットでの不動産探しが世間一般まで定着したことで、不動産仲介会社の集客戦略はサイトへの物件広告掲載が主軸になっている。サイトに掲載する物件数が莫大に増えたため更新作業が追いつかないのだ。

落とし忘れが増えれば、ユーザーも不動産を探しにくくなり、検索サイトの信用性にも関わる。そのためサイト運営会社では、罰則を設けて厳しく取り締まっている。警告などに従わない場合は、掲載停止に踏み切る場合もある。昨年には首都圏不動産公正取引協議会からの要請を受け、特に悪質とされた不動産会社42社の物件を掲載停止にした。

しかし、「更新作業が追いつかない」という不動産仲介会社は多く、サイト運営各社の規定では掲載から1~2週間は落とし忘れがおきても罰則などは課さない方針だ。

言うまでもないが、日本では入学や就職、転勤、転職など4月の新年度に合わせて部屋探しをする人が多い。特に賃貸物件では1~3月の間で、1年間で寄せられるうちの5割の問い合わせが集中するという。不動産会社からみれば一番の書き入れ時に当たり、来店客の対応に追われ、更新作業が後回しになってしまう。

「それでは八百屋が腐った野菜を店頭に並べているようなものだ。言い訳にならない」と言う向きもあるだろう。しかし、不動産賃貸業界の仕組みを知れば、いたしかたない側面もある。

ほとんどの賃貸住宅では家主、管理会社、仲介会社という3者が関連する。部屋探しをする入居者からの問い合わせを受けたり、部屋を案内したりするのは仲介会社だ。そして、ポータルサイトやホームページに物件情報を掲載するのも仲介会社が多い。

新しい入居者を募集するときは、まず今の入居者から管理会社に退去するむねの連絡が入り、そこから仲介会社に伝わる。例えば「ABCマンションで201号の部屋が2月末で退去。3月15日から入居可能」などの、情報が管理会社から仲介会社に一斉に送られる。それを受け、各仲介会社が募集を代行する。そのうちの1社が次の入居者と契約をまとめても、すぐには他の仲介会社には情報が伝わらないため時間差が生じて、「落とし忘れ」が多発してしまう。小まめに管理会社に連絡を取ればよいが、「とても手が回らない」(都内仲介会社店長)のが現状だ。

そこでターミナルが考えたのは管理会社が持つ最新の入居データを集めることだった。

ほとんどの管理会社は、物件を管理するためのITシステムを導入している。ターミナルは管理会社のシステムと連動させて、常に最新のデータを収集するのだ。

システム連動する会社は10社以上になる。1社ごとに交渉して、提携に結びつけた。現在、同社で把握している不動産入居情報は1000万室以上にもなる。

そうしてできたサービスを「trueper(トゥルーパー)」としてまとめて、昨年から本格的な運用を開始した。ポータルサイトがこのサービスを導入すれば、最新の空室物件だけが表示されるようになる。

すでに大手賃貸不動産フランチャイズ・アパマンショップホールディングスが運営する不動産検索サイトで導入されている。今後、他のポータルサイトにも導入を提案していく。

 

ネット通販サイトも救う

この仕組みが思わぬ方面から歓迎されている。楽天やメルカリといったネット通販会社やネット銀行等にも注目されているのだ。不動産のおとり物件を防止する機能がどうしてIT関連の会社にも喜ばれるのか。

実は誰も住んでいない賃貸住宅の空室は、ネットで不正に購入した商品の受け取り先として悪用されているのだ。

手口は単純だ。偽のクレジットカードでネット通販サイトにアカウントを開設し、空室の住所を登録しておく。そのアカウントで商品を購入し、指定した日時になると、合鍵や現地に置かれたキーボックスを使い部屋に侵入する。そして、購入した商品を何食わぬ顔で受け取り、国外サイトなどで転売して現金化するという。こうした詐欺の年間被害額は数十億円にも上るといわれ、通販サイトにとっては悩みの種だった。

しかし、実在する住所なので、通販サイト側は不正に気づきにくい。さらに問題が発覚しても、もともと空室なので犯人の足がつきにくく警察捜査も難しかった。

そこでターミナルでは最新の不動産入居情報を応用し、アカウント開設時に入力される住所に居住者がいるかどうかがわかるサービス「adwhite(アドホワイト)」を開発した。

指定された配送先に居住者がいないとわかれば、詐欺の疑いがあるため、配送を止められる。不正注文、空室詐欺を水際で食い止めることができるのだ。

これは通販サイトだけでなく、クレジットカードやキャッシュカードの不正作成や、ネット銀行の口座開設でも同様の効果が期待されている。

ネット通販詐欺の犯人は捜査の手が迫ると、注文したまま姿をくらますことも多い。そうとは知らない配送会社は何度も再配達をすることになり、人手不足のなかさらなる負担となっているとの声もある。

もちろん、空き部屋を勝手に使われる大家にとっても、掃除の手間が増え、設備の破壊などの危険があった。こうした悩みが一挙に解決できるメリットは大きい。

「当社の取り組みは、市場にある不動産の最新情報、いわば在庫情報を把握するものです。常に入退居があるなかで全体が把握できなかったものをテクノロジーで可視化でき、問題とされてきたことの多くに解決策を提示できるようになりました」(ターミナル・中道社長)

部屋探しのイライラと深刻なネット通販の詐欺被害を一挙に解決するのか。不動産業界とネット通販、二つの業界から期待が集まっている。

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編集部より:この記事は WEDGE REPORT様 の2018/04/25の投稿を転載させていただきました。